Simplex Integrated Report 2024【統合報告書】
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― シンプレクスグループのガバナンスにおける強みと課題は何ですか?高橋:先ほど述べた通り、当社グループはチームメンバーや組織への信頼を基盤とし、目的達成に対するコミットメント意識が高い会社です。一方で、積極的な採用活動に伴い、組織の拡大も見込まれています。職業柄、人の心の一瞬の弱さが不正や不祥事につながる事例を幾度となく目にしてきました。新たな仲間が増え、組織が大きくなる過程では、通常では想定されないような不正が発生しやすくなります。こうした局面では「人は弱いものである」という前提に立つことが重要です。今後、当社グループもこうしたリスクを十分に認識し、不正を早期に発見し拡大を防ぐ仕組みの拡充が重要だと考えています。例えば、これまでに他の企業で内部通報制度の運用に関する研修を行った際、制度や仕組みは存在するものの、実際には健全に機能していないケースも見受けられました。こうしたケースでもさまざまな工夫を施すことによって、改善の余地は十分にあります。当社グループの場合も、単に制度を整えるだけでなく、実質的に機能する仕組みを構築し、継続的に改善を続けることが重要であると考えています。― 最後に、今後に向けた意気込みについてお聞かせください秋山:新しいアイデアを生み出すためには、活発なディスカッションやコミュニケーションが不可欠です。取締役会においても、より多面的な議論を実現するために、例えば海外のプロフェッショナルを含むさまざまな有識者を役員として迎えることが考えられます。多様性に富んだ視点を取り入れることで、攻めのガバナンスのもと、挑戦を続けていくことが重要だと思っています。また、取締役会で経営陣と議論する機会は十分にありますが、現場の社員とコミュニケーションを取る機会が少ないと感じています。特に若手社員の革新的な視点やアイデアは、会社の成長を促進する原動力となるため、若手層とのコミュニケーションを重視していきたいと考えています。高橋:現体制においては、私が唯一の女性取締役であるという事実があります。就任から今日に至るまで、個別の議論の場で性差を感じることはありませんでしたが、果たして現場で一人ひとりの社員と向き合った際に、本当に課題がないのか、取締役会がその課題を汲み上げられていない可能性があるのではないかという思いもあります。今後は、こうした意味でも、現場の皆さんと接する機会を持ち、さまざまな属性をあえて意識したうえで、社員から相談があれば取締役会での問題提起も行っていきたいです。さらに、不正を早期に発見し拡大を防ぐ仕組みの拡充等、これまで培ってきた専門性や知見に基づく提言を行うことにより、企業価値の向上に寄与していきたいと考えています。54さらなるガバナンスの高度化に向けて- お二人は社外取締役として監査等委員も兼ねています。取締役会、監査等委員会では、どのような雰囲気で議論が交わされているのでしょうか秋山:さまざまな経歴や知見を持つ社外取締役が在籍しており、考え方の多様性が担保されています。自由闊達な議論が交わされ、反対意見を述べにくい雰囲気は皆無です。また、社外取締役にも権限が十分に与えられ、システム上の問題は感じていません。また、他の社外取締役の方々も、このシステムを最大限に活用できるよう努力を重ねています。監査等委員会と取締役会の役割分担も明確で、取締役の業務執行を監査する役割が正しく機能していると感じます。高橋:社外取締役に就任して1年が経ちましたが、私も同様に、自らの考えを述べにくいと感じたことはありません。取締役会で重視されるのは発言や仕事の内容そのものであり、性差や年齢といった属性に良い意味で関心がなく、多様性を当たり前に受け入れる環境だと感じています。実際に、当社の取締役会では、金子社長をはじめ全役員が多角的な意見を受け入れる姿勢を持っており、発展的な議論がなされています。具体的なエピソードとして、社外取締役と金子社長との定期面談で、ギフトコンプライアンス(企業同士の会食や贈答品に関するルール)についての認識を伺ったことがありました。その際、金子社長は他社での問題事例や取り組みについて逆に質問され、今後こうした取り組みを拡充する必要性があるとの意見が述べられました。さらに、面談直後に行われた取締役会では、企業価値を毀損しないためにもギフトコンプライアンスに一層の配慮が必要であるとの認識が全役員に共有されました。社外取締役に就任する前は、金子社長は創業者として事業推進に強い意志を持つがゆえに、リスクに対する許容度が高いのではないかという懸念を少なからず抱いていました。しかし、この一連の出来事を通じて、周りの意見に真摯に耳を傾ける方なのだと実感し、経営者としての確かなリーダーシップを感じました。

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